近況(2023-09-19)

9月10日に大阪の文学フリマで雑誌などを出して、おかげさまで想定より多くの人にお買い求めいただいた。それは大変よかったのだが、そこで雑誌の入稿からイベントに至るまでしばらく気が張っていたのが抜けて、ここ一週間ほど調子が悪い。

まず生活リズムの問題がひどく、毎日寝る時間と起きる時間がバラバラすぎる。うまいこと朝起きられた日も執拗な眠気で夕方くらいに眠ってしまって、また眠れない夜を過ごして……という感じで、もはや夜型の生活リズムですらなく、変拍子である。眠れなくて眠い日と寝過ぎて眠い日ばかりだ。

そんな調子だと仕事もごまかしごまかし、なんとか打ち合わせがある時間には起きて、絶対にやらないといけない最低限のことだけをやるみたいな感じになり、他の仕事に手を付けられないで時間が経つうちにそれが「いい加減やらないといけないこと」に進化して、しかしずっと眠くて仕方ないので手が進まないというようになる。

仕事でその調子だから、プライベートはもっと破綻していて、やらないといけないこと、やりたいことはいくつかあるが、何にも手をつけていない。TwitterとTinderとはてなブックマークを眺め、それからいくつかの本を適当に読んでいたら三連休は終わった。こんなことをしていても何にもならない。

今日はまだ比較的調子の良い方なので、机に向かってこのような文章を書いている、というところまで書いて、キーボードを打つ手が止まった。言葉になる以前のもやもやで頭がいっぱいだが、それを言葉に置き換える力がない。

これは久々になかなかハードな調子の悪さだ。いつもは一週間くらい適当にやり過ごしていれば結構回復したものだが。これを書きながらも、とりあえず一時間くらい横になって休みたい、という気持ちでいっぱいになる。それができてしまう労働環境なのが幸か不幸か。もちろん今は就業時間中だ。今日は有休を取ってやろうかとも昨晩寝付けない間に思ったのだが、なんとなく目覚めたらいけそうだったのでついつい打刻してしまった。そもそも先週も何もしてないし。三連休もほとんど予定を入れなかったし、十分休んだはずではないか?

あまり海外に関心がないのだが、最近は海外旅行に行きたいなとぼんやり思う。現実逃避の欲求が強まっているのを感じる。しかし金も時間もないのでできない。すごいことだ。二日くらい前には仕事をやめたいということを入社以来初めて思った。やることが山積していく一方なので逃げ出したくて仕方がない。(こんな仕事ではなく)もっと楽しかったことがあったはずでは……と思う。

私はもともと、困っていることを解決するのが好きで、それでプログラミングを覚えたりした。だからもっと現実の問題に直接アプローチしたいのだが、編集者というのは普通にやっていたらすごく迂遠なやり方でしかそれをできない。普通ではないやり方、一般に書籍編集者の仕事とは考えられていないことまですればもっとダイレクトなアプローチもできると思うが、それをやる権限を得るためにはまず普通のやり方で実績を積まないといけない。それか、本業とは関係ないこととしてやるか。しかし一人でできることは限られているので、会社の力(金、看板、人手、来月の給料の保障)を借りてそれをやったほうが楽だし、そういうものなしでやろうとして何度かうまくいかなかったから就職したのだった。

などといろいろと書き連ねているが、それは幻想で、たぶん仕事がうまくいきはじめたらこんなに最高の仕事はないくらいのことを言い始める可能性は十分にある。そもそも一年半私がこれを続けていられるという時点で悪くはないのだと思う。もっと無理なときは早い段階で見切りを付けてきた。

暗い話の後には明るい話があればいいと思うのだが、びっくりすることに明るい話はひとつもない。でも本当は驚くべきことではなく、人生はおよそ、何もかもうまくいっているか何もかもうまくいっていないか、そして何もかもどうにもなっていないかのどれかだと思う。何もかもどうにもなっていないというのはほとんど理想的な人生かもしれない。

強いて言うなら、こんな調子でも今月も給料が振り込まれるというのが明るい話であり、経験的に、金銭的な欠乏は精神に良いことはひとつももたらさない。だから体調や精神が不安定な人ほどどうにかして安定した職業に就くべきだと思っているが、それが簡単にできれば苦労しない。それに私だって毎日出社するような職場であればずっと前に破綻していたはずだ。


最近読んだ本の話を——。

『つげ義春日記』
Kindle Unlimitedに入っていて、先週くらいに読んでいた。陰鬱な気分に合っていたが、これ以上読んでいるとより陰鬱になりそうだったのでやめた。朴訥な筆致は羨ましい。

『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』
昨日ブックオフで買った。毒にも薬にもならないものを読みたいと思って読んだ。毒にも薬にもならなくて良かった。知らない世界の人の話は基本的に面白いが、それ以上のものではない。

『謎の独立国家ソマリランド』
これもブックオフで目についたので買った。半分くらい読んだところ。俺って歴史にあまり関心がないんだなあと思う。人々がどう暮らしているか、いまどういう仕組みで社会が動いているかという部分はすごく面白く読めるのだが、歴史の話になるとそこまでの面白さはない。もちろんその歴史があって現在の生活、社会が形成されていることはわかるのだが。私が読んでいるのは単行本だが、文庫もあるよう。


こういう暗い近況を何度かしたためているので、自分でも前にもこれ読んだことあるなと思う。自分の進歩のなさに驚くが、そもそも人間が成長を続けるというモデルの方に違和感がある。「三つ子の魂百まで」のほうが私にはふさわしく思える。とはいえ、なんだかんだと変化はするもので、五年後とかにこれを見たら、この頃はまだマシだったとか、この頃は若かったとか、好き勝手なことを思うのだろう。


具体的なことは言ってみれば身も蓋もないことで、下品であり、それならもっと抽象的なことを書きたいが、私にはその能力がない。


夏が長い。夏が一番好きな季節だが、いまだに暑いのはどうかと思う。


私としては今月はもう十分頑張ったのだが、それは仕事以外の話なので、仕事ではまったく評価されない。人生は総体としてあるというのに、総体として評価されることはめったにない。そもそも誰に人生を総体として評価してもらえばよいのか? と考えたとき、それが神の役割のひとつだったのだろう、と気づいた。