アウフグース

昨日仕事してたら田中が、4月末までのクーポンあるからラクーア行こうやとLINEしてきたので、まあ給料日だしなと仕事終わってないけど退勤してラクーアに行った。

それで後楽園で待ち合わせてラーメン食ってラクーア行って、田中も仕事終わってなかったんでラウンジ的なところでちょっと仕事してから風呂入ったんだけど、更衣室に館内着とかくれる受付があって、そこで田中が「アウフグース予約しようや。めちゃくちゃええで」と言うので、言われるがままにとりあえず同意した。

予約した時間にサウナ室に入って待っていると従業員がやってきて、「本日アウフグースを担当させていただきます、○○です」みたいな挨拶をした。そしたら裸の男どもが拍手していて、なんだこの空間と思いながら俺も拍手した。

アウフグースというのは何かというと、従業員がタオルをぶん回して「熱波」を送ってくれるサービスである(たぶん)。ラクーアでは全部で3セットあって、最初の2セットはサウナストーンに香油をかけてリラクゼーション的な効果を持たせつつ、適度に空気を循環させて発汗を促すような感じ。

その2セットの段階でもう結構熱くて、人生で何十回もサウナ入ってきたと思うんだけど今までにないくらい汗が出てヤバいなと思った。熱波がやってくると男どもが「うぉー」とか「あちー」とかこぼす。俺も思わずこぼした。熱い。ここまではでもまあ気持ちいい範囲だった。

3セット目で、従業員が「それでは最後に、サウナ室上部の熱い空気を送らせていただきます」と言った。暖かい空気は部屋の上部に滞留するわけだけど、それをタオルで一人一人に下ろしてくれる。俺の座っていた位置と反対側から下ろし始めたのであっちの方から「ぐぉー」とか「あぅぐ」みたいな声にもならぬ声が聞こえてくる。

ところで、俺は基本的にサウナは湯船のついでという感じで、サウナ目当てで銭湯などに行くことは少ないのだが、田中は整い野郎である。サウナハットも持ってる。アウフグースも「めちゃくちゃええで」とか言ってたくらいだし、相当好き者なんだろう。

それでいよいよ俺と田中が座っているあたりに順番が回ってきた。俺は目を瞑って覚悟を決めた。そしたらもう信じられないくらい熱い空気がぶわーっと肌を刺した。ギリギリ耐えられるかどうかくらいの熱さで、ただ整い野郎の手前見栄を張って我慢していたら、横から風圧を感じ目を開けると田中が脱兎のごとくサウナ室を飛び出していた。我慢する理由もなくなったので、俺もあとに続いた。田中は水風呂に直行しながら「火傷するかと思ったわ」と言ったので「前もやったんじゃないの?」と聞いたら「前も火傷するかと思って出た」と言っていた。

なのにまた予約するんだからクレイジーだし、苦悶の声を洩らしながら熱さに耐えている1裸の男どももまた同様である。そんな光景をなぜ見なくてはならないのか。でも俺も機会があったらまたチャレンジすると思う。日常では味わえない異様さなので。


さっき以下の記事を読んで、タイムリーだなと思ったので書いた。私もサウナがやや意識の高い趣味としてオッさんの文化から簒奪されつつあることには、少し思うところはある。アウフグースは、おそらく「整い」の延長線上で流行り出したんだろうけど、結果としてはもはや整いどころではなく、「黙々と熱さに耐え、ひたすら汗を流す」といった古式ゆかしい価値観に近づいている気はする。徒党を組んで暢気に喋れるような空間でもないし、ここに和解のポイントがあるのかもしれない。

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  1. なお、最初の従業員の挨拶でサウナ室が大変熱くなるので、体調に留意して無理をせずサウナ室を出るようにというアナウンスがあった。ただ兵どもゆえ田中と俺以外はまったくサウナ室を出て行かなかった。