2022年2月11–12日 金–土曜日

10日の日記で「今日はもう机に向かうのをやめて、ごろごろ本でも読んでいようかなと思う」と書いた。実際にそれをして、『「いき」の構造』の続きを読んだ。日付が変わってから読み終わったのでここに書いておく。たいへん面白かった。高校のときにこれを読んでいたら文学部哲学科を目指していたかもしれない。もちろん、今からでも遅くはない。


11日、祝日のためアルバイトは休みだった。昼過ぎ、浅草へ。懇ろな関係にある人と蕎麦を食べた。そのまま浅草周辺をうろついて、錦糸町へ。錦糸町は目抜き通りをまたぐ高架にプラットフォームが走っていてとてもかっこいい。

投宿して、『グリーンブック』を見た。思うところはあるが基本的にはよくできた映画だと思う。1962年のアメリカ、大変理知的で教養のある黒人のピアニストが、黒人差別の根強い南部で演奏旅行するにあたり、粗野で暴力的なイタリア系白人をボディー・ガード兼運転手として雇うというロードムービー。人物の造形が短文で説明できそうなのがアメリカ映画っぽいなと思う。


翌朝は東京都現代美術館へ。同館ではいま三つの展覧会を開催している。久保田成子、クリスチャン・マークレー、そしてユージーン・スタジオ。いずれも会期の最終盤。このうち後二つを見た。

ユージーン・スタジオはTwitterの「現代美術界隈」ではわりと大不評である。記憶するところでは、展覧会が始まった直後はかなりウケが良かったはずだが、そのときとは客層が違うのだろうか。いまでも反応は二極化している。

展示は、「すごく丁寧で、だから何?」という感じだった。作品も展示空間もどれも大変丁寧につくられていると思う。面白い着想もあったし、技術的にもすごいと思わされるものもあったけれど、だから何なのだろう……という感じ。展示空間は狭くないし、作品の質量も大きいのに、なぜか何事かを見たという感じがしない。金と技術の空虚な達成という感じがする。私は現代アートについてほとんど何も知らないが……1。クリスチャン・マークレーはよかったのだけどそれについて云う言葉を持たない。いつでも批判する方が簡単ですね。森美術館のChim↑Pom楽しみだなー。

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連れ合いが疲れていたので早めに解散して、暇になったので地元の図書館へ。市の中央図書館は東京の公立図書館では、都立中央図書館に次ぐ蔵書数がある。それなりに恵まれた図書館だと思う。

といっても使うのは数年ぶりで、大学の図書館が極めて充実していたので地元の図書館で何かを借りる必要がしばらくなかった。カウンターで貸出カードを確認してもらうと有効期限が切れていたので更新の手続きをすることになった。

最初に担当してくれたカウンターの人(のほか、大抵のスタッフ)と更新を担当してくれた人では名札に違いがあって、後者のみ市の名札をつけていた。大抵の公立図書館がそうだが、ここも例によって図書館流通センターに業務を委託しているが、登録・更新手続きのような事務は、個人情報を扱うとかなんらかの都合で市職員しか担当できないのだろう。その市職員も(土曜だし)正規職員ではなく会計年度任用職員や、もしかするとどこかから派遣されてきた、雇用主が違うだけのスタッフなのかもしれない。くらくらする。

私がいま関心を持っている分野はいくつかあるが、そのうちひとつが「ここ」(東京郊外)のことで、それで「地域資料」の棚を見ていたら、ホンマタカシの『東京郊外』があった。これが地域資料にあるのは面白い。正鵠を得た配架だが。ずっと以前に一度見たことがあるが、以前見たとき気づかなかった宮台真司の文章が巻末にあって、それがわりと面白かった。あとその近くの「在住作家」コーナーに黒田寛一の著作が並んでいてそれもかなり味わい深かった。結局九冊借りて帰った。


  1. こういった留保を述べておかないと怖い目に遭う世界だということは知っている。