2022年1月14日 金曜日 おごるか割り勘か

夢のなかで起きた出来事に対して、「このことを日記に書こう」と考えている夢を見た。友人の誰かが、「日記をつけているとこれは日記に書けるなと思いながら暮らしてしまう(のが厭だ)」というニュアンスのことを言っていた気がする。俺はそれを厭だとは思っていないが、そうなることは事実であり、ついに夢でまでそれを考えてしまった。


昨夜は結局朝方まで起きていて、それなのに8時にぱっと目が覚めてしまったので寝不足で全然頭が回っていない。目がしょぼしょぼする。今日は時間がたくさんあるので昨日書けなかったことを書こう、と思うのだが全然思い出せない。その程度のことだったのかもしれない。

なにもすることがないとき、まずはSNSなどを渉猟するのだが、だいたい面白そうなものを見終えるともうインターネットは見ていられない。現実にはいつまでも見てしまったりするが厭気が差している。それで本を手に取るが、今日みたいに頭の回らない日は全然頭に入ってこない。

本棚には全然頭の回らない日にも読める本を集めた一角があり、そこから穂村弘角田光代の共著である『異性』を取り出してぱらぱらとめくる。『異性』ってタイトルでエッセイ出せるのは平成までなのではとか思いながら。


そこでは複数の異性間にまつわるテーマ、たとえば「交際に当たって好きって言う? 言わない?」みたいなものに対して、二人がそれぞれエッセイを展開しているのだが、そのなかに「おごるか割り勘か」というテーマがあった。二人が書いていることもそれぞれ面白かったが、まったく紹介せずに自分の思うところを書く。

世の中には、男が女におごる、という文化がある。どちらが主流なのかわからないが、「男はおごって当たり前」という女性も「割り勘で当たり前」という女性もどちらも見たことがある。男である自分としては、割り勘の方が助かると思いつつ、どちらでもいいのだが、問題は相手がどちらの立場なのか見極められない、ということだ。

おごってもらったら普通にラッキーと感じる人もいれば、女だからっておごるとか私を舐めてるのかと感じる人もいると思う。どちらも理解できるし、自分にそれが可能な状況であれば相手の喜ぶようにしたい(ときもある)。ただその人の言動からどちらの傾向なのか見極めるのが案外難しい。

普段たとえば女性の社会進出に一家言ある人でも、まあおごられる分には全然みたいな人もたぶんいると思うし、逆にそういう考えをそこまで持っていなくても、おごられるのはなんとなく落ち着かないという人もたぶんいると思う。どちらかわからない。

いざお会計というタイミングになって、伝票を持ってみたりする。そうすると相手が財布を出す素振りを見せる。それが本当に金銭を支出するというサインなのか、それとも形だけなのか、という問題もある。俺だって結構目上の人とご飯などに行って、確実に先方が払ってくれるだろうと諒解しているときでも財布を出す素振りはやはりしてみたりするのだし。

いやそもそもそんな状況になっているのが失格で、相手がお手洗いなどに立っているときに会計を済ませておくべきだという考え方もあるのかもしれない。それが世間では「スマート」とされていたりするらしいが、本当かよ? 俺が女だとして男にそれやられたらなんか相手がくだらない恋愛コラムが載っている、やけにページ分割の多いアフィリエイトサイトとかを読んでその作法を知ったさまが浮かんで、うわって思っちゃうんだけど。おごるならおごるでいいが普通に会計してほしい。

話が少し脱線したが、そういったもろもろの「どうなんだこれ。どっちなんだ」的な状況に私はもう飽き飽きだ。なので、すべての女性は初めてのデートやそれに類する行為のときは、「私はあなたのおごりがいいです」または「私は割り勘がいいです」と書かれたTシャツを着用するといったわかりやすいアプローチをしてきてほしい。もちろん「私がおごります」Tシャツでもいい。いや、それによっていくら必要か変わってくるから、アポイントメントの段階でどれであるかを明言してほしい。

こんなわけのわからないことを言っている男でも交際してくれる人がいるのだからありがたい話ですね。なお、俺は誰からでも、どのような状況でも、おごってもらうことに何ら抵抗はない。そういったプライドは持ち合わせておらず、完全にありがとうとしか思わないので気兼ねなくおごっていただければ幸いである。


このくだりを書いていて思いだしたが、大学一年のとき自転車で十分の距離にある出身高校に、これまた家が近い高校の同期が来ているというのでふらっと遊びに行って、夏の暑い日だったので喉が渇いたなと思ったが、二人してぱっと家を出てきたら財布を持ってきていなくて、たまたま廊下で遭遇した後輩(当時高校三年)に二百円借りて自販機で飲み物を買ったことがある。そのときはちょっとさすがに情けないなと思った。