2023年1月10日(火)

しばらく文章を書くことからかなり遠ざかっていたのだけど、最近また書けるような気がしたので書く。日付を題しているが、日記として続けられるかはわからない。別に続かなくてもよい。

仕事を終えた後、新宿の紀伊國屋へ。図書館で借りた本を濡らしてしまい、弁償せねばならない運びとなった。現物を持ってきてくれ、とのことで買いに行く。医学書だったのでそれなりの値段がするが、仕方がない。せめて濡らしてしまった方の本をくれないだろうかと、さもしいことを思う。

途中、花園神社を通りかかって、元日に友人と初詣に行ったが参拝は長蛇の列だったのでおみくじだけ引いて帰ったので、改めてお詣りしておくことにする。もうさすがに空いていた。別に神を信じているわけでもないのだけれど、神社にお詣りすることにそこまでの抵抗はない。初詣のような機会でなくても、なんでもないときにでも神社に通りかかって暇だとお詣りしている。神を信じていないのに何にお詣りしているのか、という話だが、端的に言うと気分転換くらいのものである。長年その土地にあって人々がそこに何かを信じて祈りを捧げてきたということ自体に価値を感じるので、まあそれに続いているという風にも言える。だから明治神宮のような場所にはあまり意味を感じず、お詣りしたことがない。そこに行くと、角川は所沢に神社まで作ってしまったので逆に新しすぎてよいかもしれない。お詣りを終えて紀伊國屋の方面に抜けようとすると、立ち小便をしている人がいて、私は神を信じていないとは言っても神社の境内で立ち小便はできないなと思った。それもまたある種、尊敬に値する態度な気がする。

新宿の紀伊國屋では決済端末にカメラがついていて、QRコード決済の場合はそこに携帯の画面をかざす形となる。レジの店員さんが「10cmくらい離して画面を見せてください」と言ったが、その指し示す手は優に20cmは上に置かれていて少し笑ってしまいそうになった。しかし私の思う10cmでは反応せず、20cmくらい上のところで反応した。つまり彼女の手の方が正しくて言葉が不正確なのだった。あるいは、私の長さの見当が外れているのかもしれないが、いま私が思う10cmを指でつくって定規を当ててみたら9.8cmだったので私は正しかった。2,000円以上お買い上げの方にはエコバッグを差し上げているらしいので、迷わずもらった。

医学書は六階なのだが、会計を済ませたあと、ついでに五階で『ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 ストリートフォト』を立ち読みする。小見山峻という写真家が好きで、彼がInstagramで「プロの撮り方」シリーズは良かったと言っていたので。この『ストリートフォト』は先月発売されたものなので、彼が参考にしたのとは違うのだろうが、私の関心が主にこの領域にあるので確かめた。悪くなかったが、今のところ買うほどではないという判断。

以前から写真はそれなりに好きな方だと思うが、先月に中古のコンデジ(SONY DSC-RX100M5)を買ってからより熱が高まっている。今日で二十日くらい経つが、すでに千枚以上は撮っていて、こんなに割の良い買い物もないなという気持ちになる。コンデジ→ミラーレス一眼と来て、ここ二年半くらいはデジカメを売ってフィルムカメラを使っていたのだが、その短い期間にもどんどんフィルムは廃番になり、残ったものは大幅に値上がりし、現像代まで上がっていく一方で、正直ちょっとつらい。千枚をフィルムで撮っていたら、36枚撮りでも三十個近くになり、現像と合わせたら数万円はくだらないだろう。もちろんフィルムであればそんな撮り方はしないので、皮算用に過ぎないが。

しかし、これはなかなかいいカメラですよ。私は今まで、デジタルとフィルムで富士フイルム、キヤノン、オリンパス、ニコン、ミノルタを使ったことがあるが、ソニーは使ったことがなかった。いくらミノルタからαを買ったと言っても(写真屋や光学屋ではなく)電機屋のカメラじゃないかと思うところもあったのだが、こういう小さくて高機能みたいなものを作らせるとソニーは本当に上手だなと感じる。さすがウォークマンを世に出しただけのことはある。写真作品を制作している知人もずっとαを使っているしなあ(彼は動画も撮るからだとは思う)。ただ、私はまだこのカメラのことをよく分かっていないという感覚があるので、もう少し研究したら何か書きたいなという気持ちでいる。それにしても、よい写真はiPhoneでも撮れるが、ファインダーを覗いてシャッターを切るという体験は格別だ。

紀伊國屋を出て、カレーが食べたい気分だったので西口の11イマサで夕食をとることにする。11イマサはたまに無性に食べたくなる味をしている。新宿駅の東西通路を歩いていると、ナンパ師と思しき人が腰にカウンターを提げていて、見ると数を数えながら声をかけているのだった。おそらく、今日の声かけは23件とかまとめているのだろう。見た瞬間にうわー、終わってるな、という気持ちにならざるを得なかったし、声をかけられる方からすればたまったものでもないだろうが、哀れな恋愛至上主義(あるいは性愛至上主義)の被害者と見ることもできるし、自分もどれだけその価値観から免れているだろうか、と思い直す。それにしても東西通路では常に複数人によってナンパが行われていて、ここはどんな土地なんだと思う。

平たい皿、平たいスプーン、きゅうりの漬物、すべてが11イマサである。

店を出て、西口でいくらか写真を撮り、喫煙所で煙草を吸ってからバスに乗って帰った。